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貸付先がわからないソーシャルレンディング


たいてい、金銭を貸付することで投資活動を行いたいという場合には、投資家は貸付先についてよく理解した上で貸したいと思うでしょう。貸したお金を返してくれると納得した上で契約することが重要になるからです。しかし、ソーシャルレンディングでは貸付先がわからないという仕組みがあるのが気にかかるかもしれません。ソーシャルレンディングで貸付先が匿名化されているのには理由があるのです。

ソーシャルレンディングで貸付をする仕組み

ソーシャルレンディングを利用する投資家は貸付を行っているというイメージを抱くことがよくありますが、厳密には貸付を行っていません。ソーシャルレンディング事業者に対して出資を行っているのが投資家の実際の活動内容です。その出資によって得た金銭を利用してソーシャルレンディング事業者が貸付を行い、得られた利子による利益を分配するという仕組みがソーシャルレンディングの基本になっているということはまず理解しておく必要があります。

匿名組合出資契約の存在

投資家が出資を行うときには匿名組合出資契約を締結しなければならないのがソーシャルレンディングの基本であり、これによって出資先の匿名化が行われることになっています。この契約は投資家が出資した金銭などを事業者が事業活動に対して自由に利用できる権利を得る代わりに、それによって得られた利益を分配しなければならない義務を負うという契約です。その際に投資家と貸付先の互いの匿名性を確保しなければならないのが原則になっています。

投資家にとってメリットにもなる契約

ソーシャルレンディングを行う際に、匿名組合出資契約を結ばなければ貸付先がわかるという考えを持つかもしれません。しかし、この契約を結ぶことによって投資家と貸付先の互いの関係を切り離すことができるのがメリットにもなります。通常、貸付を行うためには貸金業登録が必要になりますが、投資家と貸付先の関係が匿名化されて間に事業者が入っていることによってその義務がなくなるのです。面倒な手続きを経ることなく貸付型の投資を行うための仕組みになっています。

運用上のメリットもある匿名化

貸付先が匿名化されていることに運用上のメリットがあるのは確かです。ある業界に対して投資をしたいというときに一つの企業に限定することなく投資を行うことができるようになります。一方、企業側も借金をしているということを世の中に知られることなく貸付を受けることができるため、積極的に予算を確保して事業展開を行いやすくなるのです。そのため、匿名化がむしろメリットとして機能しているのがソーシャルレンディングと言えるでしょう。


貸出先が分からないリスクは注意が必要


2017年3月、ソーシャルレンディング事業者の「みんなのクレジット」が説明とは違う融資先へ貸し出していたことが分かりました。お金を集めるだけ集めて違う用途に使われるというのは困りものです。

自分が投資したお金がきちんと本来の目的に利用されているかどうかを確認できる方法があればいいのですが、難しいのが現状です。

実績と信用のあるソーシャルレンディング事業者を選ぶほかありませんが、まだ始まったばかりのサービスなので、最初は余裕資金で小額からスタートする方がいいかも知れません。

お金を借りたい中小企業と貸したい個人投資家をインターネット上で仲介する新たな金融サービスを行っている東京の会社が、投資家から集めた資金の多くを事前の説明とは異なる融資先に貸し出すなどしていたとして、証券取引等監視委員会は行政処分を行うよう金融庁に勧告する方針です。
勧告の対象となるのは、ソーシャルレンディングと呼ばれる金融サービスを行っている東京・渋谷区の「みんなのクレジット」です。

(中略)

みんなのクレジットはこの1年で集めた40億円を超える資金の多くを融資先と説明していた業種ではなく、自社のグループ企業に貸し出していたということです。証券取引等監視委員会はこうした行為が金融商品取引法に違反するとして、近く行政処分を行うよう金融庁に勧告する方針です。

ソーシャルレンディングの仲介会社は、貸金業法の規制で具体的な融資先の企業名を明らかにできないため、業種や地域などを示して資金を集めていますが、金融の専門家などからは、こうしたことが投資家のリスクにつながっているのではないかと指摘する声も上がっています。
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